石窯を使ったオーブン料理は元来、粉食文化の国々で発達したものです。米食文化である日本の食文化 でいう”煮る、焼く、蒸す”では、例外的に石焼き・壷焼きの焼イモや、魚などを塩で包み、蒸し焼き にする「塩釜」などはあるものの、あまり一般的な料理ではありません。ところが最近、窯の魅力に惹かれ 手づくりの窯を持つ人たちが増えています。手近にある石や土、レンガなどを使って自分好みの窯を作る作業 そのものに楽しみがあります。そして、自分で作った窯から生まれる料理の数々・・・楽しみ方は無限大!
燃料には「薪」や「炭」を使います。電気オーブンやガスオーブンに比べて、日によって窯のコンディションが 変化し、その焼き具合も左右されるのがアナログ的で、これまた愉しという趣も加味されているようです。 その日その日で違うからこそ、「火」と対話する楽しさもあります。現代の日常生活で薪を燃やして調理や暖房に 活用することをしなくなっていますが、古来、私たちが親しんできたエネルギー源である薪や炭を見直し、 「木質バイオマス」を暮らしに取り入れるというのも、最近のエコライフにマッチした感覚にもなります。 ついこの間まで、薪おこしは子どもたちの仕事でした。しかし今の子どもたちはライターやチャッカマンは知ってるが マッチは知りません。もちろん、学校では”火遊び”は禁じられています。子どもたちにとって毎日の生活の中で火をおおす 必要はなくなりました。スイッチひとつでガスコンロも電気オーブンにも火がつきます。火力も簡単に調節できます。 便利になった分だけ、火を直接体験する機会はないように思えます。それは、今の若い親たちにもいえることかもしれません。
さて、イタリアから発信された「スローフード」は、ファストフードと違って、いつでも&どこでも同じ味や質を提供する ということは出来ません。逆説的な言葉ではないものの、最近のトレンドでもある「地産地消」という考え方と合致しています。 その土地の多様な食べ方を評価し、旬に食べるこそが一番美味しいということを打ち出した言葉でもあります。 その考え方にマッチしたリーズナブルでカジュアルな食べ物といえば・・ピザ。特に窯で焼いた本格ピザの普及は、日本各地に 石窯設置の気運をつくり、スロークッキング、スローフード、スローライフの考え方の定着に一定の力を貸したといえます。 ピザの本場イタリアでは、日常的な燃料としては薪を使わなくなっていますが、それでも「ピザは石窯で焼くもの」とされており、 石窯で当たり前に薪を使って美味しくピザを焼き続ける店が多い。それだけ、石窯と薪の組み合わせでつくったピザの味は格別ということでしょう。 他にもスペインはバレンシア地方の漁師の炊き込みごはんとして人気の「パエリア」は、オーブンで炊き上げるサフラン味の米料理。窯をつくったら 一度は試してみましょう!本来は専用の平たいパエリア鍋を使いますが、フライパンやすき焼き鍋、中華なべなど窯に入る大きさのものだったら それで十分代用出来ます。鍋底にこんがりできる「おこげ」が香ばしくて食欲をそそります。
窯づくりは決して難しくはありません。アウトドアやキャンプ場で、その場限りの窯料理を楽しみたいのならば、「うずめ窯」や 現地調達の石と土でつくる窯など簡単につくれて撤去できる窯を試してみてはいかがでしょうか。使い勝手は二の次でも、できる料理は 本格的。ありきたりのキャンプ料理に飽きた方にはオススメです。 プロ思考の方であれば、熱効率などを含めた採算性やデザインも問題になるし、室内に窯をつくるのならば、排気の処理など高度なテクニックも必要となるでしょう。 窯本体をつくるには、熱を蓄える壁となる素材が必要です。当然ですが、火を入れた時に燃えてしまったり、溶けてしまったりするものでは窯はつくれません。 石や土、レンガ、鉄板などは手に入れやすいし、比較的に安価でつくれます。なるべく身近にある素材、使い古しや廃材などに着目し、上手に生かして オンリー・ワンの窯を築きたいものです。窯のベースには、自然石を使うのもいいでしょう。自然石は、熱くなるのに時間がかかりますが、熱をしっかり蓄えて 長時間幅射熱を出し続けます。だから石窯は、料理の焼きあがりも最高なのです。